5kg

なにが5kgかというと、アメリカに来てから増えた体重の重さだ。

最初の1年は特に変動がなかった。それで良い気になって、Chipotleのブリトーとインドカレーをローテーションしていたら、超えた。いや、肥えた。Chipotleって、またメキシカンか。我ながらメキシカン好き過ぎる。

特に、シカゴを出ることが決まってからはひどい食生活だった。「どうせ、もうここは一時の住処だし」という訳の分からない理由で、野菜の摂取を放棄して、ほぼ毎日CVS(ドラッグストア)に寄り、スニッカーズだの、やたら甘いエネルギーバーだのを買って食いつないでいた。甘いものを食べると塩気が欲しくなるので、チップスを副菜にしていた。で、気がついたら5kg増量していた。

アメリカに行くと万人が太る、という誤解が生じることを防ぎたいので、これはですね、まさに、まさにですよ、私の不摂生である、ということをですね、改めてここで強調させていただきたい。

さて、ボストンへ移り、パートナーKと合流して一緒に住むようになった。スニッカーズを主食にするのは止めて、節約のためにも基本は自炊しているのだが、なかなか体重は元に戻る気配がない。講師の先生に惚れ込んで嬉々として数年間通い続けていたヨガを、渡米してやめてしまったこともあり、代謝も落ちているのだろう。

どうでも良い話だが、小学校の頃に入っていたバスケ部(注1)の練習中に、隣のコートで男子チームの顧問の先生が、「おい、お前ら、格好つけるなら絶対(シュートを)決めろよ」と釘を刺していたのを目にして以来、私の頭には「シュートを決める自信がないならば、格好をつけてはいかぬ」というのが若干過剰に刷り込まれている。恐る恐るのアメリカ生活のなかで思うようにいかないことが重なっていくうちに、私はこの刷り込みをこじらせて、「ろくにデータも出せず、英語も満足に話せない+5kg増量の日本人はおしゃれなどしてはいかぬ」という曲解に脳が支配されてしまい、一時期、スーパーで買ったブロッコリーに付いてきた輪ゴムで、伸び放題の髪を一つにまとめて日々ラボに行くところまで自意識レベルが堕ちた。

ここから学んだこととして、環境が変わると何かとストレスになるので(あたりまえ)、急激に順応しようとせず、日本で好きだったことをなるべくそのまま続けたりしてこまめに気分転換するのが大事であるようだ。「実験が軌道に乗るまでは…」という願掛けみたいなことをやってストレスを溜め込むと、「自分なんかブロッコリーの輪ゴムで十分だ」という思想に支配されてしまうので、たいへん危険だ。

ということで、数日後に研究報告を控えていて若干余裕のない週末だが、心の健康のために外食して、ちょっとだけ気分転換してくることにする。

…と思っていたのに、OrinocoでモヒートだのPisco sourをペロリと飲んだらすっかり楽しくなってしまい、OasisとBlur、というかデーモン・アルバーンに関するWiki情報を隣のKに語り散らかし(嫌な酔っ払いの典型)、帰宅して更におやつを食い荒らしたので、土曜の夜は全く仕事にならなかった。

5kg…!!

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(注1)
うちの小学校は生徒数が極端に少なかったため、春は陸上・夏は水泳・秋は音楽とバスケ・冬は駅伝、といったように、部活動は季がわりだった。なので、本当にバスケ部だったのかと聞かれると、なんだか違うような気もする。