光を強調する写真をトップに据えておきながらこんなことを言うのは矛盾しているかもしれないが、シカゴもボストンも、ニューヨークでさえ夜の光は日本のそれに比べて控えめで淡い。コンビニが少ないせいか、視神経を通して頭を覚醒させるような強烈な光の刺激はほとんどない。
しかし、夜のタイムズスクエアには突き刺すような強い白い光が溢れていて、ドラッグストアに人がふらふらと集まってくるあの感じがある。
東京の主要な駅前における夜の光景を見慣れている日本人にとって、タイムズスクエアを訪れることは実はそこまで新鮮な体験ではないのでは、と私は思う。(人混みで心が死んでいたので写真は撮っていない)
4年くらい前にここを訪れた際、スパイダーマンのコスプレ男に掴まって写真をノリで撮らされ、チップをせびられた嫌な思い出があるのだが、さすがに規制がかかったのか、今回はコスプレ集団を見かけることはほとんどなかった。
タイムズスクエアから歩いてエンパイア・ステート・ビルディングへ向かう。長い行列に並んで(待ち時間1時間くらい)展望台へ。
ここでは窓ガラス越しではなく、フェンス越しに直にニューヨークの夜景を見ることができる。
この日は月が出ていて綺麗だった。
実は、今回の小旅行のゲストは何を隠そう義母で、日本から遠路はるばる訪ねに来てくれたのだった。
なのに、エンパイア・ステートでもタイムズスクエアでも、私は人混みの中での時間をやり過ごすのに必死で、おそらくもしかしたらもう一生ないかもしれないニューヨークの摩天楼の上、夜の空気が緩やかに不規則に動いて流れる中、義母と一緒に夜景を眺めていた静かな数十分間を大事に掴んで心にしまうことができないまま、エレベーターで地上へと降りてしまった。
そして、ボストンへ帰ってきてから、とても後悔した。
でも、思い返せばあの時、義母は新調したカメラから夜景を覗いて何回もシャッターを切ってはキングコングの話をしていたから、今になって後悔している私が思っているよりも、実際にはきっと、もっとずっと楽しい時間が流れていたはず。
[その3へ続く]